エンタメとして、小説が読みたい!
そこで、選んだのは
『希望の糸』 by 東野圭吾
東野圭吾氏は好きな作家の1人です。
というわりには、本作を加賀恭一郎シリーズと認識せずに読み始めましたが…
ストーリー
「死んだ人のことなんか知らない。あたしは、誰かの代わりに生まれてきたんじゃない」
本当の家族とは何か。
閑静な住宅街で小さな喫茶店を営む女性が殺され、捜査線上に浮上した常連客の男性。
彼は災害で2人の子供を失い、深い悩みを抱えていた。
事件の背景でそれぞれの家族の問題が複雑に絡み合う。
深まる容疑者たちとそれを調べる刑事の苦悩。
果たして、誰が彼女を殺したのか、また、どのような理由で殺害するに至ったのか?
感想
■前情報なしだったので、読みはじめてから、加賀恭一郎シリーズのスピンオフ編?となった。馴染みのキャラクターが登場し、一気に親しみが湧きました。
■タイトルの「希望の糸」という言葉に興味を持って、本書をセレクトした。読み進めていくうち、「希望の糸」は、子どもを指していると思われ、登場するどの家族もギリギリ家族としての形を保っているように描かれている。その形、考え方がさまざまで興味深かった。
■中盤まで、物語の筋道が追いにくくてちょっとずつ読んだ。物語の筋が辿りにくいと、なんとなく細切れな読書になってしまうものです。
しかし、中盤を過ぎた頃から、登場人物の繋がりや、登場人物の考え方などが読み取れるようになってから、物語が追いやすくなって、一気に読み進めることとなりました。
やっぱりミステリーはこうでなくちゃ!
■東野圭吾作品は、ミステリーの中に、人生論や価値観などが埋め込まれてストーリーが組み立てられている。犯人は誰だろう?という謎解きと同時に、人生や価値観について考えさせられる。
今回も、殺害の動機が、なるほどなぁと思った。
被害者が好んで使っていた「巡り会い」という言葉がキーになっていたが、そのような独特な設定もおもしろい。
■震災で2人の子供を失った夫婦が、立ち直るため、子供をもうけて大切に育てる。その中で、親としては、子供をとても大切にしているつもりでも、子供としては、死んだ2人の姉と兄の身代わりでしかないと感じ、愛されていないと感じている。
さらに、子供の出生の秘密も絡んで、登場人物それぞれの思うところは複雑となる。まさに「糸」が複雑に絡まり合っている状況。
物語ラストで、このような複雑に絡み合う糸を、子供の方から、単純明快にする場面があって、その点が本書の救いになっているように思われた。まさに「希望」というタイトルがぴったり当てはまった。
読後は、大事なことは、複雑な事実を理解することなのではなく、感情をシンプルに表現することなのではないか、と思った。
家族のことだけでなく、それ以外のことも。
ミステリーを楽しむ以外にも、いろいろ考えさせられる内容でした。
■本の表紙や、めくったページにも糸の絵が描かれており、物語とピッタリ合うなあと思いました。表紙やタイトルも大事ですね!
ビジネス書もいいですが、やっぱり小説はおもしろいです。
コメント